概要 
位置
形状など
区分
構造

  ・赤脾髄 白脾髄 

血管系

  ・動脈系 ・静脈系 ・終末毛細血管と脾洞の関係

作用
脈管および神経

 

 左上腹部にあるコーヒー豆のような形をした器官で、古くなった赤血球を処理したりリンパ球を成熟させたりする。

解剖学的写真を掲載しているサイトⅠ

解剖学的写真を掲載しているサイトⅡ

解剖学的写真を掲載しているサイトⅢ

 

【他の臓器との関係】

・胃の後左側に位置している。

・後方は腎臓と腎上体に接している。

・下方は膵尾と左結腸曲に接している。

 ⇒ 脾臓と膵臓、結腸の位置関係が分かるイラストを掲載しているサイト

 ⇒ 他臓器との位置関係が分かるCGを掲載しているサイト

 

【骨格との関係】

・左下肋部の第9~第11肋骨の高さにある。

・長軸は第10肋骨の走行に一致している。

・前端は通常、左胸鎖関節と第11肋骨の尖端とを結ぶ肋関節線を超えない。

・後端は第10~第11胸椎体のすぐ左側にあたる。

    

 

 

 

 

 

 

【形】扁平な長楕円形あるいはコーヒー豆型

【色】暗赤紫色(中に血液がたくさん貯蓄されているため)

【大きさ】成人で長さ:10~12㎝、幅6~8㎝、厚さ:3~4㎝

【重さ】70~130g ※ウィキベディアでは「100g~200g」となっている。

【容量】脾臓には非常に多くの血管が存在している。それらの血管にどれだけの血流量があるかで容量は著しく異なる。つまり、脾臓には拡張性があり血流量に柔軟に対応している。

※以下は「船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「脾臓」からの引用文となる。

「(日本人の脾臓の重さはふつう70~130grである(男の62%,女の58%がこの大きさの脾臓をもつつ但し病理解剖のさい測つたもの).また硬化した死体で測ると,日本人の脾臓の大きさ(平均)は男では長さ99.7mm,幅72.3mm,厚さ33.4mm;女では長さ84. lmm,幅602mm,厚さ32. Ommである(鈴木文太郎:人体系統解剖学3巻上279~294,1920).他の計測によると日本人の脾臓は長さ105mm,幅65mm,厚さ25 mm,重さ97~106grのものが最も多い(西川義方,河北真太郎:東京医学会雑誌33巻23~95,1919).また山田によれば脾臓の重さは男(1129例)の平均131.5gr,女(755例)の平均122・4grである(山田致知:日本人の臓器重量.医学総覧,2巻14~15,1946).)40才を過ぎるとたいていその大きさが減ずる」

 

以下の解説、正確性に欠ける可能性有!

後端:上方にある端で、左第10肋骨の高さに位置する。

前端:下方にある端

下縁:内側に位置した縁で、一般的に平滑な縁となる。

上縁:外側に位置した縁で、しばしば2~3個の切痕(notch)が見受けられる。

臓側面visceral surface 胃などの臓器に面した面のこと。脾門によって2つに分けられているが、ともに腹膜の続きである漿膜で覆われている。

脾臓が漿膜で覆われていることが確認できる写真を掲載しているサイト(脾臓は病的に大きくなり、それを摘出したときの手術の写真、腹膜も確認できる)

横隔面diaphragmatic surface 横隔膜に接している面で、比較的平滑な面となる。

脾門hilum of spleen 臓側面にある脾臓に出入りする血管、リンパ管神経の出入り口とな

っているところ。

副脾accessory spleen 脾門の近く、胃脾間膜中にしばしばみられる球状のもの。数やその大きさは個人差がある。以下、副脾に関して解説しているサイトからの抜粋文

 

「健常人の10~20%の人が持っているとされ、多くは脾臓のすぐ近くにあって1~2センチ大の球形をしています。脾臓と同様の組織です。できものではなく、生まれつきのものですから、悪性化したり何か悪さをすることはありません。」

副脾の写真を掲載しているサイト

副脾の写真を掲載しているサイトⅡ 

副脾の写真を掲載しているサイト

 以上が「日本人体解剖学 (下巻) 」(南山堂)にある区分の名称だが、「船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「脾臓」では以下の様な名称も見られる。

胃部:胃底に密接している部分

腎部:左の腎臓と腎上体ならびに横隔膜の腰椎部に接する部分

膵部:膵尾と左結腸曲に接する部分

 

 

 

 脾臓を大きく2つに分けるとすると以下のようになる。

1
被膜および脾柱

被膜(capsule)は以下の2つが合したもの

上層:漿膜 (serosa)

下層:白膜 (tunica albuginea)

   弾性線維を豊富に含み、平滑筋線維をわずかに含む結合組織性の線維被膜

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

脾柱(trabecula of spleen)は被膜の続きとなるもので、内部に伸びた突起のこと

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

2
脾 髄

脾髄 (splenic pulp)は、脾柱間に存在する細網組織で構成される網目状の部分で以下の2種類がある。

①赤脾髄 ②白脾髄

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

 

【赤脾髄(red pulp)】

 赤脾髄は以下の2つより構成される。 

1

脾 洞

splenic sinus

特殊な壁を持つ太い静脈性毛管

参考とな細胞組織学的写真を掲載しているサイト

2

脾 索

splenic cord

ビルロートの索(cord of Billroth)とも。細網組織で構成されている。

脾索の軸となるのが細かな膠原線維で、その膠原線維と膠原線維の間には以下のものが存在している。

・細網細胞  ・大食細胞(マクロファージ)  ・赤血球  ・顆粒白血球  ・リンパ球  ・形質細胞

※胎児または小児の場合は核を持った赤血球が存在している。

細胞組織学的写真を掲載しているサイト(右側)

船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「脾臓」では以下のような文が見受けられる。

「Hellmannによると脾臓の全量の70~90%を占めていて…」

 

【白脾髄(white pulp)】

 白脾髄は、脾髄内のところどころに灰白色の斑点として確認ができるもので、直径が約0.2~0.7㎜のリンパ小節(lymph nodule)のこと。胚中心を持ち、脾小節(マルビギー小体、Malpighian corpuscle)とも呼ばれる。

 船戸和弥のホームページ」の「解剖学テキスト」の「脈管学」の「脾臓」では以下のような文が見受けられる。

「Hellmanによると白脾髄の量は脾臓の全体の6~22%である.」

胚中心や中心動脈が分かる細胞組織学的写真を掲載しているサイト

 

 

 

 

細胞組織学的写真を掲載しているサイトⅠ

細胞組織学的写真を掲載しているサイトⅡ

細胞組織学的写真を掲載しているサイトⅢ

細胞組織学的写真を掲載しているサイトⅣ

 

【動脈系】

1
脾動脈の脾枝↓

splenic branches of splenic artery

脾門で、上下の2大終糸に分かれて脾臓内へ入っていく。

分岐の様子が分かるイラストを掲載しているサイト

分岐の様子が分かるイラストを掲載しているサイトⅡ

2
脾柱動脈

trabecular artery

脾門から脾臓に入ってきた脾動脈の脾枝は、脾柱動脈となって脾柱内を走り、脾柱の分岐に従って分岐していく。

脾柱動脈が脾柱内を走っている様子が分かる細胞組織学的写真を掲載しているサイト

3
脾髄動脈

artery of the splenic pulp

脾柱動脈は脾柱から出て実質中に入り脾髄動脈となる。

4
中心動脈

central artery

脾髄動脈はその後、中心動脈となって脾小節の中心、あるいはその付近を通過する。

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

脾小節内での動脈の分岐が分かるイラストを掲載しているサイトⅠ

脾小節内での動脈の分岐が分かるイラストを掲載しているサイトⅡ

5
筆毛動脈

penicilliary artery

中心動脈は、脾小節を通過中、あるいは脾小節を出た後に、筆毛状に分岐して筆毛動脈となる。径:約15?

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

6
莢(さや)動脈

sheathed artery

筆毛動脈はさらに分岐して、特殊な細網組織に包まれた壁の厚い莢動脈となる。そして、終末毛細血管から脾洞へと連絡していく。径:約6~8?

細胞組織学的写真を掲載しているサイト

 

 

【静脈系】

1
脾 洞 ↓

splenic venous sinus

脾洞は、径が約40~50?の静脈洞。脾洞の壁の内皮は疎く配列する桿状細胞で構成されている。その外側を輪状線維が取り巻いている。

2
脾髄静脈

vein of the splenic pulp

脾洞の血液を集めているのが脾髄静脈だが、動脈よりも長く、脾柱に沿って走っている。

3
脾柱静脈

trabecular vein

脾柱静脈は脾柱動脈に沿って脾門に至る。

4
脾静脈

splenic vein

脾柱静脈は脾門を出て脾静脈となり、その後、門脈に注ぐ。

 

 

【終末毛細血管と脾洞の関係】

日本人体解剖学 (下巻) 」(南山堂)の「脾臓」の項を参考にして。

 終末毛細血管からの脾洞への血液の経路の諸説

1
開 放 節
終末毛細血管の末端が脾索に開き、それから脾洞に入る。
2
閉 鎖 節
終末毛細血管の末端が脾洞に直結している。
3
小動脈迷路節
動脈と脾洞を直結する経路がある。

関連イラストを掲載しているサイト

 

 以下が脾臓の主な作用になる。

1
リンパ球の成熟場所
白脾髄でリンパ球(特にBリンパ球)の成熟が行われ免疫機能を強化している。
2
赤血球の処理
古くなった赤血球をフィルターによってふるい分け、マクロファージに処理をさせている。また、破壊した赤血球から遊離した鉄分を貯蔵し、必要に応じて血液中に放出してヘモグロビンの合成に一躍を担っている。
3
血液の貯蔵
脾臓は拡張性のある臓器で、血液を貯蔵することが可能。急激な運動などで筋肉が大量の酸素を必要とするときは貯蔵した血液を放出している。特に、犬や馬などでは顕著。
4
血小板の貯蔵
脾臓は血小板の1/3を貯蔵していて、必要に応じて血液中に放出している。
5
(胎児期の)造血機能
骨髄での造血機能がない胎児期においては、脾臓で赤血球が産出されるが、生後はその機能は失われていく。

 

【動脈】

脾動脈腹腔動脈の1枝)

  

【静脈】

脾静脈

 門脈に注いでいる。脾静脈血は脾動脈血に比べて白血球の数が多く、およそ20倍に達する。

 

【リンパ管】

 漿膜下に確認され、脾門リンパ節に入る。脾臓の実質中にはリンパ管は確認されていない様子。

 

【神経】

 脾動脈神経叢からの枝として門脈から入る。無髄神経線維。