大 腸( だいちょう、英:large intestine )

 

概 要
大腸壁の構成
 粘膜粘膜上皮平坦部陰窩
      粘膜固有層
      粘膜筋板
      粘膜下組織
筋 層比較表神経働き
漿 膜部位別漿膜の有無
・神経/脈管

 

 

・大腸は便を形成し、貯留し、排泄に備える器官となる。

詳しい解説はそれぞれの解説ページを参照のこと。

【粘 膜】

 

■粘膜上皮■

主な特徴

1. 栄養吸収よりも水分回収・便形成に特化 : 小腸のように消化・吸収はほとんど行わない。

2. 厚い粘液層で上皮を保護 : 杯細胞が多く、粘液層(ムチン)を大量分泌

3. 物理的・化学的刺激に強い構造:比較的耐久性が高く、機械的摩擦やpH変化に強い。

 

〈平坦部〉

構成細胞

 
名 称
存在場所
割 合
寿 命
備 考
1
陰窩/表層上皮(特に多)
10~20%
3~7日
 非常に多い(粘液分泌)
2
陰窩全体~表層上皮
75~85%
3~5日
 水・電解質吸収

〈陰 窩〉

リーベルキューン陰窩とも呼ばれる。(小腸も同じ)

陰窩の密度は小腸よりも明らかに高い。

 「ChatGPT」に聞いてみると

 大腸:1 mm²あたり約50~100個、小腸:1 mm²あたり約20~60個

・ほぼ直線的な管状腺で、粘膜筋板近くまで達している。

細胞構成

 
名 称
存在場所
割 合
寿 命
備 考
1
陰窩全体~表層上皮
75~85%
3~5日
 水・電解質吸収
2
主に陰窩下部
1%未満
数週間
 セロトニン分泌
3
 幹細胞 陰窩底部
数%以下

数か月

~年単位

 陰窩底部に存在
4
 増殖細胞 陰窩下部~中部
10~15%
1~3日

 盛んな細胞分裂

内分泌細胞:腸クロム親和性細胞(EC細胞・最多)、L細胞、D細胞、N細胞、PP細胞

 

大腸・小腸陰窩比較表

 

 
項 目
小 腸
大 腸
1
陰窩の名称
 リーベルキューン陰窩
 リーベルキューン陰窩
2
絨毛
 あり
 なし
3
陰窩の役割
 分泌・細胞供給
 分泌・細胞供給(主体)
4
陰窩の長さ
 約 200~300 µm
 約 300~500 µm
5
陰窩の形状
 やや短く不規則
 長く直線的
6
陰窩の径
 約 40~80 µm
 約 50~100 µm
7
陰窩密度
 低め
 高い
8
陰窩開口部
 絨毛間に散在
 平坦粘膜に高密度
9
主な分泌物
 腸液・抗菌因子
 粘液(ムチン)
11
 少なめ
 非常に多い
12
吸収への関与
 間接的
 ほぼなし
13
 陰窩底に存在
 陰窩底に存在
14
 あり
 原則なし
15
 あり
 あり(やや少)
16
表層上皮の主役
 吸収上皮細胞
 吸収上皮細胞
17
病理での注目点
 絨毛萎縮・陰窩過形成
 陰窩拡張・分岐・異型

 

平坦部と陰窩比較表

 
項 目
平坦部
陰 窩
1
主な役割
 最終的な吸収・バリア形成
 分泌・細胞供給(更新)
2
吸 収
 あり(主体)
 水・電解質(Na⁺, Cl⁻ など)
 ほぼなし(ごく軽度)
3
分 泌
ほ とんどなし
 あり(主体)
 粘液分泌が中心 
4
粘液分泌
 少ない
 非常に多い
5
上皮の更新
 行わない
 行う(幹細胞が存在)
6
構成細胞の主役
 吸収上皮細胞
 杯細胞・増殖細胞
7
杯細胞の割合
 少なめ
 多い
8
 ほぼなし
 少数存在
9
 なし
 陰窩底に存在
10
病理での注目点
 表層障害・びらん
 陰窩拡張・分岐・異型

 

■粘膜固有層■

・血管 : 陰窩リーベルキューン陰窩)を取り囲むように毛細血管網が非常に発達

・リンパ管 : 陰窩の基部周囲にリンパ毛細管が血管と並走することが多い。小腸ほど目立たない。

線維芽細胞粘膜固有層の主要構成細胞、組織中に散在しコラーゲンなどの線維成分、ヒアルロン酸やプロテオグリカンなどを分泌

・神経:自由神経終末が存在、しばしば孤立リンパ小節が見られる。

・免疫細胞 : 粘膜固有層は「免疫の場」で免疫細胞が豊富。

        主なものとしてリンパ球T/B細胞)、形質細胞(IgA生産:とても重要)、マクロファージ樹状細胞 など

■粘膜筋板■

・機能としては以下のようなものが挙げられる。

 粘膜の微細な局所運動、腸陰窩の内容物排出を助ける、分泌物を腸管腔へ押し出す

 

【粘膜下組織】    

   

血管:動脈・静脈・毛細血管が豊富。粘膜への栄養供給と老廃物回収

リンパ管:粘膜からのリンパの流れを受ける。

神経:粘膜下神経叢(マイスナー神経叢)が見られる。腸運動・分泌の調節に関与

各種細胞

 線維芽細胞膠原線維弾性線維細網線維、基質成分(プロテオグリカンヒアルロン酸など)を分泌

 免疫細胞:マクロファージ樹状細胞リンパ球T/B細胞)、好中球好酸球など

【筋 層】

・内輪走:周囲を比較的均一に連続的に1周する。基本構造は小腸と同じ。蠕動運動・分節運動の主役。

・外縦層:小腸と異なり全周を覆わず3本の帯状構造(結腸ヒモ)

 

〈消化管筋層比較表〉

 
部 位
内輪走行筋
外縦走行筋
備 考
1 食 道
厚く、蠕動に関与
上部は随意筋、中・下部は平滑筋
食道上部は骨格筋、下部は平滑筋で混合
2
厚く、さらに内斜筋が加わる
中程度
内輪・外縦に加え、胃特有の 内斜筋層 があり、混合運動(かくはん)が可能
3 小腸十二指腸空腸回腸
薄め、蠕動運動と分節運動に関与
薄め
外縦筋は均一で帯はない
4 大腸結腸直腸
内輪が比較的厚め、内容物を締める
外縦筋は3本の縦走に集約
大腸特有の形態、外縦筋が帯状で壁にたるみを形成
5 直腸肛門部
内輪筋は厚く、肛門括約筋と連続
外縦筋は薄くなる
肛門括約筋と連携して排便を制御

 

〈神経支配〉

腸管固有神経系が筋層を支配

アウエルバッハ神経叢 : 内輪・外縦筋の間にあり、運動の調節を担当

自律神経系交感・副交感)からの入力も受ける

〈働 き〉

1. 蠕動運動

  内輪走行筋と外縦走行筋が協調して、便を肛門方向に移動させる。

2. 分節運動

  内輪走行筋が局所的に収縮 → 内容物を混ぜる・水分吸収を促す。

3. 腸管形状の維持

  外縦走行筋の結腸ヒモが結腸の構造を特徴付ける。

 

【漿 膜】

結合組織層の解説ページ ⇒ 細胞層の解説ページ

部位別漿膜の有無

部 位
位 置
最外層
1
 腹腔
2
 腹腔
3
 腹腔
4
S状結腸
 腹腔
5
 後腹膜(固定)
 腹側のみ漿 膜/背側は外膜
6
 後腹膜(固定)
 腹側のみ漿 膜/背側は外膜
7
直腸上部
 骨盤内(腹膜反転部まで)
 部分的に漿 膜
8
直腸中・下部
 腹膜

・中腸由来 : 盲腸虫垂上行結腸横行結腸(近位2/3)

・後腸由来 : 横行結腸(遠位1/3)、下行結腸S状結腸直腸上部(約2/3)

        ※直腸下部は総排泄腔由来で、さらにその下の 肛門管下部は外胚葉由来となる。

 

【神 経】

・長管壁内神経系:腸管固有の神経系で中枢神経を介さず蠕動運動、分泌活動などに関与している。

  ENS:Enteric Nervous System

 

自律神経系

 交感神経迷走神経、働き)蠕動運動・分泌を促進

   ※横行結腸の中央付近で迷走神経支配から骨盤内臓神経支配に切り替わる。

 副交感神経大内臓神経(T5-T9)、働き)運動・分泌を抑制、血管収縮